排水溝からのイヤなニオイ発生メカニズムと放置リスク
キッチンのシンクや浴室の排水口から「魚が腐ったような」・「生ごみ臭」のような悪臭が上がってくると、不快感と同時に衛生面での不安も募ります。その原因は主に以下の通りです。
1. 排水管内に溜まったヘドロ・生ごみカス
- キッチンで洗った野菜くずや食べ残しが排水口を通って配管内に堆積し、バクテリアやカビが繁殖。
これが悪臭の元となる。 - ヌメリや油脂分が壁面にこびりつき、微生物の餌になって悪臭成分を発生させる。
2. 水封(トラップ部)の水切れ
- トラップ部分(U字型の配管)が水で満たされていないと、
配管内の下水ガスがそのまま上がってくる。
キッチンや洗面所を長期間使わないと、この「水封切れ」が起こりがち。
3. 排水トラップ内のカビ・雑菌繁殖
- ぬめりがある状態で放置すると、
雑菌(緑膿菌など)やカビが発生し、
硫化水素・メタン臭など強烈な悪臭を放つ。
放置すると起こるリスク
- 悪臭だけでなく、
バクテリアが繁殖した排水管を通じて生活空間に菌が拡散する恐れがある。 - 排水管内の詰まりが進行し、水の流れが悪くなると、
キッチンや浴室が逆流し、床が水浸しになるリスク。 - 定期的な掃除を怠るとヘドロが固まってしまい、
業務用高圧洗浄機や薬剤でしか除去できない頑固な状態に。
ワイヤーブラシ・排水管掃除ワイヤーを使った簡易掃除方法
最も手軽に試せるのが「ワイヤーブラシ(ドレンクリーナー)」での排水管内部の掃除です。細いワイヤー先端に小さなブラシやフックが付いたものを使い、管内のヘドロや髪の毛、ゴミをかき出します。
Step1:ワイヤーを準備し、排水口にセット
- 排水口につまったゴミやヘドロをできるだけ取り除き、
ワイヤーが通りやすい状態にする。 - ワイヤー先端を排水口の径に合わせて選び、垂直にゆっくり差し込む。
抵抗がある場合は無理に押し込まず、少しずつ回転させながら奥へ進める。
Step2:内部をかき出しながら引き上げる
- ワイヤーが当たる箇所がつまりの原因(ヘドロが固着している場所)。
前後にゆっくり動かしながら、詰まり物を絡め取る。 - ワイヤーを引き上げていくと同時に、付着したゴミをしごき落とす。
何度か繰り返すことで、排水管内のヘドロが緩み、水が流れやすくなる。 - 排水口周囲にバケツや雑巾を置いておくと、落ちたゴミが飛び散っても後片付けが楽。
Step3:ぬるま湯で流し、ワイヤーをすすぐ
- ワイヤーを取り出した後、ぬるま湯(40~50℃)をバケツで流し込み、緩んだヘドロを排水口から押し流す。
- ワイヤーを水で十分に洗い流し、
歯ブラシや古い布で汚れを拭き取り、
日陰で乾燥させる。
排水ワイヤーは数百円~1,000円前後で購入できるため、日常的に一本あると安心です。
重曹+クエン酸を使ったナチュラル掃除法
化学薬剤を使わず、環境にも家計にもやさしい方法が「重曹+クエン酸」を使った発泡掃除です。目安として「重曹1カップ(約200g)+クエン酸1カップ(約200g)」で数分~十数分で効果を発揮します。
Step1:重曹を排水口に直接ふりかける
- 排水口内部のぬめりやゴミが見える場合は、
箸やペンなどを使って大まかに取り除いてから実施。
Step2:クエン酸を水に溶かして注ぎ込む
- クエン酸を水100~150ml程度に溶かし、
重曹の上からゆっくり注ぎ込む。 - 重曹とクエン酸が反応して発泡が始まり、
泡が排水管内部の汚れをかき出す。
Step3:15分ほど放置してからぬるま湯を流す
- 15分程度放置したら、ぬるま湯をバケツで2~3回に分けて大量に流し、
発泡で浮かせたヘドロを押し流す。 - それでも流れが悪い場合は、ワイヤーブラシ掃除と併用すると効果的。
クエン酸が手元にない場合は家庭用の酢(5~10%)でも可。ただし、発泡力はやや弱くなるため、
放置時間を30分程度に延ばすとよいでしょう。
業務用薬剤を使った徹底掃除──プロのようにキレイにする方法
重曹クエン酸では取り切れない頑固なヌメリや尿石が排水管内にこびりつく場合、業務用薬剤を使うと短時間で強力に除去できます。ドラッグストアやホームセンターで「排水口用強力クリーナー」として販売されているものを使用します。
Step1:換気を良くし、手袋・ゴーグルを装着
- 強力薬剤は硫酸系や次亜塩素酸系、塩素系などが含まれ、
目や呼吸器への刺激が強いため、ゴーグル・マスク・ゴム手袋が必須。 - 窓や扉を開け、換気扇を回して有毒ガスがこもらないようにする。
Step2:薬剤を排水口に適量投入
- 説明書通りの量を必ず守り、一気にドバッと入れないこと。
多すぎると流水で希釈されず、効果が半減する。 - 薬剤を投入後、付属のキャップ(またはザル状のカバー)があればかぶせ、薬剤が飛散しないようにする。
Step3:時間を置いてぬるま湯で洗い流す
- 薬剤の説明書に従い、15~30分ほど放置。
パイプ内部で薬剤が化学反応を起こし、汚れを溶かす。 - 放置後は、ぬるま湯や水を勢いよく流し込む。
水圧で溶けた汚れを一気に流すことがポイント。 - 薬剤を使った後は、排水管内に薬剤残渣が残らないよう、
十分に水で洗い流す。
業務用薬剤は頻繁に使うと排水管内の塩ビ管や配管が劣化する恐れがあるため、
年に2回までを目安として使うようにしましょう。
排水マス(トラップ部)の分解掃除手順
排水マスやトラップ部には臭いの元が直接堆積するため、分解して掃除すると強力に悪臭を抑えられます。ただし、床下に潜る必要があるため、ある程度の経験がある方、または業者に依頼することをおすすめします。
Step1:床下点検口を開け、懐中電灯で配管位置を確認
- 洗面台下のキャビネット内、あるいは床下収納から点検口を探し、
床下に潜る。懐中電灯で配管(たいてい鉄製・塩ビ製の排水管)を確認。
Step2:排水マス(U字トラップ)を取り外す
- 排水口の目皿やフタを外し、目視で排水トラップの位置を確認。
- 塩ビ製の場合は、プラスチックドライバーでバンドを緩めるか、ナットを回してU字管を取り外す。
金属製の場合は、ウォーターポンププライヤーでナットを緩め、
捨て水用のバケツを下に置いて外す。
Step3:トラップ内部を高圧洗浄またはブラシで洗浄
- トラップ内にこびりついたヘドロや汚物を、
ワイヤーブラシ(細長い排水管用ブラシ)でかき出し、バケツで受ける。 - 頑固な汚れには、重曹クエン酸や業務用薬剤を直接かけて反応させてからブラシで擦る。
- 分解できない部分は業務用高圧洗浄機で排水管内部を吹き飛ばす方法もある(業者依頼)。
Step4:パイプを再組み立てし、水漏れチェック
- トラップを元の状態に戻し、ナットやバンドをしっかり締める。
この際、パッキン部がずれていないかを念入りに確認する。 - 排水口に水を流し、排水マスを通るときに漏れがないかをチェック。
漏れがあれば緩んでいる箇所を増し締め。
排水管洗浄のプロに依頼すべきケースと費用目安
セルフケアを試しても悪臭が消えない場合、排水管内でヘドロが固まりすぎている可能性があります。以下のようなケースでは、専門の清掃業者に依頼しましょう。
業者に依頼したほうがよいケース
- セルフ掃除を何度も繰り返しても悪臭が軽減されない場合。
- 水が流れにくく、シンクや洗い場に水がたまる状態。
- 床下から湿った臭いがあふれている場合、
床下配管に深刻な詰まりがある可能性がある。 - 定期的に薬剤やワイヤー掃除をしているが、半年以内に再発する場合。
費用相場
- 軽度の排水管洗浄(ワイヤー+中性洗剤使用):8,000~12,000円程度(出張費+作業費込)
- 高圧洗浄機による排水管内洗浄(10mまで):15,000~20,000円程度
- 床下配管点検+原因特定(カメラ調査含む):20,000~30,000円程度
- 配管部改修(破損・ひび割れ補修):10,000~15,000円/m+廃材処分費
日常的な排水溝メンテナンス・予防策
排水管の悪臭や詰まりを予防するためには、以下の習慣を取り入れましょう。
1. ぬるま湯で週1回以上の流し込み
- 60~70℃程度のぬるま湯を排水口に流し込み、油脂や石鹸カスを流れやすくする。
冷たい水よりも温かい方が油分が固まりにくい。
2. 重曹+クエン酸を月1回実施
- 重曹1カップ+クエン酸1カップを交互に排水口にふりかけ、
発泡したあとぬるま湯を大量に流す。
悪臭成分を分解・溶解させる効果がある。
3. 排水口の目皿やゴミ受けをこまめに掃除
- シンクや洗面所の排水口にある目皿やゴミ受けは、
毎日使い終わったらゴミを捨てて中性洗剤でこする。
ヌメリが付着する前に除去することがポイント。
4. 臭い防止用カバーや薬剤を併用
- 市販の排水トラップ用消臭剤(固形タイプ・ジェルタイプ)を定期的に投入すると、
悪臭の発生を抑えられる。 - 排水口カバー(シリコーン製の蓋)を使うと、
臭いの逆流を一時的に防止できる。
まとめ:まずはセルフ掃除で試し、それでもダメならプロに相談
排水溝からの悪臭や詰まりは、「ワイヤーブラシ掃除」「重曹+クエン酸」「業務用薬剤」のいずれかで多くが解消できます。
「水が流れにくい」「強い悪臭がいつまでも続く」「床下に漏水が見られる」などのサインがあれば、
業者に相談し、排水管内カメラ調査や高圧洗浄を検討しましょう。
日常的なメンテナンスを怠らないことが、一番のトラブル予防策です。




