UVカットガラスとは?どんな仕組みで紫外線をカットするのか
UVカットガラスは、ガラス自体またはコーティング層に紫外線(UV-A・UV-B)を吸収・反射させる機能を持たせた特殊なガラスです。主に以下の方法でUVを遮断します。
- 特殊膜蒸着方式(ハードコート・ソフトコート)
ガラス表面に薄膜(酸化チタン系やスズ系など)を蒸着し、UV波長域を反射・吸収します。
透明度を保ちつつ90%以上のUVカット率を実現。 - 複層ガラス内にUV遮断フィルムを挟み込む方式
複層ガラスユニットの空気層にフィルムを封入し、紫外線を効率的に遮断。
外部からはほとんど見えず、メンテナンスも容易。 - UV吸収材添加型ガラス
ガラス融解時にUV吸収材(セレン系など)をガラス素材に混ぜ込み、ガラスそのものが紫外線を吸収するタイプ。
多少黄色味がかるが、防眩性能も向上。
これらの方法により、UV透過率を5%以下に抑えることが可能となり、室内の家具やフローリングの日焼け、人体の皮膚ダメージを軽減できます。
UVカットガラスのメリットと活用シーン
UVカットガラスには、多くの利点があります。主な活用シーンと併せて紹介します。
家具やフローリングの劣化防止
- 長期間、日当たりの良いリビングや寝室にUVカットガラスを導入すると、家具の色あせや床材(フローリング)の変色を抑制。
- 高価な無垢材や天然木の家具を保護し、
メンテナンスコストを削減できる。
人体への紫外線ダメージ軽減
- 日光浴をしながらの室内作業やテレワーク時などで、
皮膚へのUV-A(日焼け・光老化の原因)を抑制。 - お子様やペットが日差しの強い窓辺でいる際にも、
UVによる肌ダメージを軽減できる。
植物栽培やペット飼育スペース
- 観葉植物やハーブ等を室内栽培する際、UV-Bは成長に悪影響を及ぼす場合がある。
UVカットガラスを使うと、
成長をコントロールしやすくなる。 - 爬虫類や両生類を飼育する場合、
UV不足や過剰を防止し、生体に優しい光環境を作る。
美術館やギャラリー・ショールーム
- 展示物(絵画や工芸品、アンティーク家具など)の色あせ・劣化を抑制するため、
UVカットガラスをケースや窓に取り入れる。 - ショールームで高級車や高価ブランド品を展示する際、
太陽光によるUVダメージを軽減することで商品価値を維持。
UVカットガラスの選び方と性能比較
UVカットガラスにはさまざまな種類があり、それぞれ性能や価格が異なります。以下のポイントを押さえて選びましょう。
遮蔽UV波長帯(UV-A・UV-B)のカット率
- UV-B(波長280~315nm)は主に日焼けや皮膚の炎症を引き起こす。
UVカットガラスでは通常100%近くカットする。 - UV-A(波長315~400nm)は光老化やシミの原因となる。
Low-E膜や特殊コーティングで90%以上カット可能な製品を選ぶ。 - スぺック表記で「UV透過率○%」や「UVカット率99%以上」と明記されているものを選ぶと安心。
可視光線透過率(VLT)と室内の明るさ
- UVカット性能が高いほど、同時に可視光線透過率が低下し、
室内が暗くなる場合がある。
特に冬場は日照が少ないため、
室内の明るさを優先するか断熱性を優先するか検討。 - Low-E複層ガラスの場合、可視光線透過率70%前後の製品が主流。
- 透明度を重視するなら、
高透過タイプ(VLT:75%以上)+UVカット膜付きのペアガラスが最適。
断熱・遮熱機能の有無
- UVカットガラスと断熱ガラスを兼ね備えた「UVカット+Low-E複層ガラス」を選ぶと、
冷暖房効率の向上にもつながる。 - 夏場の日射遮蔽効果を重視するなら、
断熱ガラスに遮熱コーティングを追加した製品を検討。
UVカットガラス交換・施工の流れと費用相場
UVカットガラスは、既存のガラスを「コーティング方式」で後貼りする方法と、「ガラスユニットそのものを交換」する方法があります。それぞれの流れと費用相場を見てみましょう。
1. ガラス交換方式(ペアガラス内にUVフィルム封入)
- 設置窓の採寸・現地調査:サッシの種類、窓サイズ、断熱要件を確認し、最適な複層ガラスを選定。
- 複層ガラス製作:UVフィルムを封入したガラスユニットを工場で製作。
通常1週間~10日程度かかる。 - 既存窓ガラス撤去:既存の単板ガラスまたは古いペアガラスを注意深く取り外し、廃棄。
- 複層ガラスの取り付け:新しいUVカット複層ガラスユニットをサッシに差し込み、
押さえゴムやフィンガーリップでしっかり固定。
シリコーンシーリングで気密性を確保して完了。
費用相場:15,000~25,000円/㎡(ガラス本体+施工費込。既存枠そのまま利用)。
Low-E膜+UVカット複層ガラスなら20,000~30,000円/㎡程度。
2. コーティング方式(既存ガラスにUVカットコーティングを後貼り)
- 下地処理・洗浄:ガラス面のホコリや油分を徹底的に除去。
コーティング剤の密着性を高めるため、アルコール系クリーナーで脱脂。 - UVカットコーティング塗布:スプレーまたはローラーでコーティング剤を均一に塗布。
ムラがないように複数回重ね塗りすることがポイント。 - 乾燥・硬化:室温で塗膜が完全に硬化するまで1日~2日ほど置く。
高湿度や低温時は硬化不良が起こりやすいため室温管理が重要。 - 仕上げクリーニング:乾燥後、マイクロファイバークロスで表面を拭き取り、
ヘイズ(白濁)やホコリを除去。コーティングの透明度を確保。
費用相場:8,000~12,000円/㎡(材料費+施工費込)。
DIY用キットもあり、
自分で施工すれば材料費のみ5,000~8,000円/㎡程度。
DIYでUVカットコーティングを行う際の注意点
- 下地の徹底脱脂:油分やホコリが残っていると、コーティング材が剥がれやすくなる。
アルコールスプレーで拭き取りながら作業する。 - 施工環境の湿度・温度管理:コーティング硬化に適した
温度(15~30℃)と湿度(50%以下)を保つ。
高湿度時は硬化不良や白濁の原因。 - 重ね塗り間隔:メーカー指定の乾燥時間(15分~30分程度)を守りながら、
薄く何度も重ね塗りするとムラなく仕上がる。 - マスキングで部品保護:サッシ枠や取っ手部分にコーティングが付かないように
マスキングテープで養生しておく。 - 施工後の掃除:研磨剤入り洗剤や●●溶剤など強い薬品でこすらない。
塗膜を傷つけないよう中性洗剤+マイクロファイバークロスで拭き取る。
UVカットガラス施工でよくあるトラブルと対策
- 白濁・ヘイズが発生する:下地の脱脂不足や湿度が高い状態での施工が原因。
→ 古い塗膜を完全に除去し、環境を整えて再施工。 - コーティングが剥がれる:強い衝撃や硬度の高い洗剤で拭いた場合に起こる。
→ 硬化後1週間は、触れない・拭かない・窓を開閉しないよう養生。 - UVカット効果が不十分:施工後に紫外線測定器でチェックしないと実際のカット率がわからない。
→ 信頼できるメーカー品を選び、施工後にサンプルで効果を測定。 - 施工ムラが目立つ:コーティング剤の濃度が高すぎたり、塗布ムラが原因。
→ メーカー指定の希釈比を守り、
スプレーノズルやローラーの使用方法をマスターする。
まとめ
UVカットガラスは、紫外線ダメージから家具やフローリングを守り、人体への影響を軽減し、快適な室内環境を実現します。
交換方式のUVカット複層ガラス(Low-E併用含む)なら冷暖房効率向上とUVカットを両立できるほか、DIYでのコーティング方式もコストを抑えて導入可能です。ただし、施工時の下地処理・温湿度管理・膜厚調整が非常に大切なため、
DIYの際もメーカー手順を厳守し、業者依頼の場合は施工実績とアフター保証をチェックしましょう。




