網入りガラスとは?特徴とメリット
網入りガラスは、ガラスの内部に金属製の網(ワイヤー)が埋め込まれた特殊なガラスです。一般的に厚さ:5mm~8mm程度で、ワイヤーメッシュを挟み込むことで、ガラスが割れた際に飛散せず、破片を網が押さえ込む構造になっています。それにより、防火性や耐震性、防犯性が向上し、以下のようなメリットがあります。
- 飛散防止性能が高い
ガラスが割れても網が飛散を抑え、破片が飛び散るのを防止。
小さな破片が飛び散るのを抑えるため、二次的な怪我リスクを軽減できる。 - 防火性能(耐火性能)
火災発生時、ガラス内部のワイヤーが熱で溶けにくく、ガラスが外れるのを防ぐ。
耐火性評価(JIS等級)をクリアした製品を選ぶと、火炎や熱から室内を一定時間保護可能。 - 耐震性能
震災や衝撃を受けた場合に、ガラスが割れても網が破片を保持し、ガラス全体が剥がれ落ちにくい。
高層マンションや地震の多い地域での窓ガラスとして適している。 - 防犯抑止力
普通のガラスより割れにくく、さらに割れても破片が飛び散らないため、侵入に時間がかかる。
空き巣等の侵入抑止効果が期待できる。
網入りガラスの設置場所と適用シーン
網入りガラスは特に火災や地震時の安全対策として以下の場所でよく用いられます。
マンションやオフィスの共用廊下・階段室
- 防火壁の一部として、ビル火災時に階段室や廊下の炎を一定時間遮断。
- 災害時の避難経路を確保するため、網入りガラス窓を通して煙や炎の侵入を防ぐ。
学校・病院・福祉施設
- 火災や地震時に児童・患者の安全確保が最重要視される施設では、
網入りガラスを使うことでガラス破片の飛散を抑え、避難をスムーズにサポート。 - 廊下や教室間の仕切り窓として、日常時は採光を確保しつつ、有事には安全性を発揮。
住宅の勝手口・リビングサッシ・浴室窓
- 特に勝手口やリビングサッシは外部の騒音や風雨を遮断しつつ、
地震や火災の際にガラス破片を飛散させず居住者を守る。 - 浴室窓は湿気が多い環境でも錆びにくい金属網を選べば、防火性を兼ね備えたまま長寿命。
網入りガラスの交換・修理方法と費用相場
網入りガラスは普通の透明ガラスに比べて厚みや構造が複雑なため、交換や修理の際にはいくつかポイントがあります。
網入りガラスの割れ方・破損の種類
- 部分的なヒビ割れ
落下物や衝撃でガラス表面にヒビが入るケース。網が破片を保持している状態。 - ガラスの全割れ
強い衝撃でガラス面がひび割れ、内部の網は残ったままガラス破片が周囲に剥がれ落ちる。 - 網の腐食・錆
長年湿気にさらされると、網が徐々に錆びて強度が低下。
見た目に黒ずみや腐食が見られたら交換時期。
修理と交換の選択基準
- ヒビが浅く、網やガラス片が完全に残っている場合
→ 応急処置として傷テープや透明テープで補修。ただし根本的な強度回復には至らない。 - ヒビが深く網の劣化も見られる場合
→ 交換を推奨。網入りガラスは再接着や部分補修が難しいため、
ガラス板ごと交換する必要がある。 - 網自体に腐食が見られる場合
→ 表面だけでなく内部の網構造が強度低下している可能性大。
全交換が必須。
交換費用相場(ガラス+施工費込)
- 網入り透明ガラス(5.5mm厚/標準サイズ:約W910×H1820mm)
→ 20,000~30,000円/枚 - 網入りクリアガラス(8mm厚/大型サッシ用:約W1000×H2000mm)
→ 30,000~45,000円/枚 - 防火認定網入りガラス(厚み:8mm~10mm)
→ 40,000~60,000円/枚(防火性能・JIS規格対応) - 網入りガラス修理(ヒビ補修)
→ 5,000~8,000円程度(応急的にヒビを補修テープで抑える) - 網入りガラス廃材処分費:1枚あたり3,000~5,000円程度(自治体・業者による)
※上記はあくまで目安。地域やサッシ形状、網入りガラスの品質(国産/輸入品)、防火認定の有無によって金額が変動します。必ず複数業者で見積もりを比較しましょう。
網入りガラス交換の手順と注意点
網入りガラスの交換は、以下の手順で行うとスムーズです。特に防火設備のガラス交換では施工後の検査基準を満たす必要がありますので、慎重に進めましょう。
Step1:既存ガラスの状態確認と寸法採寸
- 破損箇所の形状・大きさを確認し、網入りガラスの厚み・柄(平板・強化・防火認定など)を特定。
- サッシ内側のガラス枠(ガラス溝)寸法を正確に測る。
特に溝幅やガラス押さえ金具の位置を確認。 - 使用する網入りガラスのグレード(厚み、AGCやNSGなどメーカー)を選定。
Step2:防火認定が必要か確認
建築基準法や消防法で定める防火設備に該当する窓ガラスは、「防火認定」を受けた網入りガラスを使用しなければなりません。たとえば:
- 避難階段室の窓
- 共用廊下と隣接する居室の窓
- 自動火災報知設備のない階段室の窓
防火認定の網入りガラスは、ガラス厚やワイヤー網のピッチ、耐火時間が規定されています。施工後に検査が行われる場合もあるため、自己判断は避け、必ず専門業者に相談してください。
Step3:既存ガラスの除去と廃棄
- 作業前に周囲に傷がつかないようマットや段ボールで養生。
- ゴム手袋・保護メガネを装着し、飛び出している破片を注意深く取り除く。
- サッシの押さえ金具やビート材(ガラス押さえゴム)を外し、
網入りガラスを慎重に取り外す。
(ワイヤーが破断するとき大きな破片が落ちるため注意) - 破片が飛び散らないよう厚手のビニール袋や段ボール箱に割れたガラスをまとめ、
自治体の処理ルールに従って廃棄。
Step4:新しい網入りガラスの取り付け
- ガラス溝の清掃と下地確認:サッシのガラス溝にゴミや古いビート材が残らないよう掃除。
- 新しいビート材(ガラスを押さえるゴム)を溝にセット:耐候性・耐熱性の高いビート材を使用。
- 網入りガラスをガラス溝に慎重に差し込み、水平・垂直を確認したうえで押し込む。
- 押さえゴムや押さえ金具を元に戻し、ガラスをしっかり固定。
- シリコンシーリング材をガラス周囲に充填し、
気密・防水性を高める。 - 施工後24時間程度はガラスを強く押さえないように注意し、
シーリングの硬化を待つ。
網入りガラス交換でトラブルを避けるポイント
- 防火認定の有無を必ず確認:誤ったグレードのガラスを使用すると、法令違反となり指導・罰則の対象になる可能性あり。
- 寸法はミリ単位で正確に測る:外注でガラス製作する場合、誤差が±1mmでもサッシに入らないことがある。
- 業者から見積もりを複数社比較:網入りガラスはガラス本体価格や加工費、廃材処分費、施工費が業者によって大きく異なるため、必ず複数社で見積もりを取得。
- ガラス交換当日は水濡れやホコリに注意:シーリング材が乾くまでガラス面に触れないようにし、
周囲に養生シートを敷いて作業環境を維持。
まとめ
網入りガラスは、飛散防止・防火性能・防犯抑止・耐震性を兼ね備えた特殊ガラスです。交換や修理の際は、防火認定の必要性や正確な寸法採寸、廃材処分ルールなどを事前に押さえ、複数業者で見積もり比較を行うことが重要です。DIYでの部分補修は応急処置にとどまり、最終的にはサッシごとガラス板を交換するのが確実な方法ですので、必ず信頼できる専門業者に依頼して安全性を確保しましょう。




