防音ガラスとは?音を遮る仕組みと主な種類
防音ガラスは、複数枚のガラスを組み合わせることで音の伝わりを抑える特殊な構造を持つガラスです。窓から侵入する「音(騒音)」には主に以下の種類があります。
- 空気伝搬音
声やスピーカー音、工事音など、空気中を伝わる音。
防音ガラスはガラス自身の質量と複層構造で
空気伝搬音を遮断。 - 固体伝搬音(衝撃音)
床の振動や隣室の歩行音など、壁や床を伝わる振動音。
防音ガラス単体では十分に抑えられないが、
サッシ枠を含めた窓構造全体で固体伝搬音を軽減できるケースあり。 - 透過音
窓の隙間やサッシの造りにより伝わる音。「隙間風」と同様に、
ほんの小さな隙間でも音が通り抜けるため、
防音ガラス+気密性の高いサッシが重要。
防音ガラスの主な種類と性能比較
防音ガラスは構造や機能によって大きく分類できます。以下では代表的な3つのタイプを取り上げ、それぞれの特徴と防音性能を比較します。
1. 複層ガラス(ペアガラス)+遮音ガラス
- 構造:2枚の透明ガラス+乾燥空気層(6~12mm程度)。
そのうち1枚を厚め(6mmなど)にして遮音性を高める。 - 遮音等級(Rw値):約32~35dB
(一般的な窓:Rw25dB程度、遮音ガラス併用:Rw35dB程度) - メリット:比較的安価で、
窓交換工事だけで防音対策が可能。
結露軽減や断熱性能も併せ持つ。 - デメリット:高音域(人声の高い周波数帯)に対する遮音性能はやや低い。
低周波音(低いドスンという音)も完全には抑えられない。
2. 吸音・遮音複層ガラス(中間ラミネート構造)
- 構造:外側:透明ガラス(4~6mm)、中間:ポリビニルブチラル(PVB)などの吸音フィルム、内側:透明ガラス。
すべてを複層構造にする場合もある。 - 遮音等級(Rw値):約38~40dB
(PVBフィルムの厚みやガラス厚により性能が向上) - メリット:PVBフィルムが振動を吸収し、
特に中高周波の音を効率的に遮断。
車のエンジン音や騒音(70~80dB帯)を大幅に軽減。 - デメリット:通常の複層ガラスより高価(3~4割増し)。
ガラス重量が増すため、サッシ枠の強度や施工方法に注意。
3. トリプルガラス(3層複層ガラス)
- 構造:三枚の透明ガラス+2層の乾燥空気層(各6mm以上推奨)
もしくはLow-E膜+吸音フィルムを組み合わせた製品もある。 - 遮音等級(Rw値):約40~42dB
- メリット:複層ガラスの性能をさらに超え、
外部からの騒音を大幅にカット。低音域から高音域まで幅広く遮音可能。 - デメリット:重量が大きくなり、
サッシや下地にかかる負荷が増加。
施工費も高額(約4~6万円/㎡)となる。
防音ガラスを選ぶ際のポイントと失敗しないための注意点
防音ガラスを導入する際は、以下のポイントを押さえて選びましょう。
1. 遮音等級(Rw値)を確認
- 窓ガラス単体のRw値だけを見ても実際の防音性能はわかりにくい。
サッシの気密性や枠の遮音性も合わせて考慮することが重要。 - 騒音源の種類(車、電車、飛行機、工事音など)に応じた測定レベルを知り、
それに見合ったRw値の製品を選ぶ。 - 例えば、幹線道路沿いの住宅であれば
、
空港近くならを目安に検討するとよい。
2. サッシ・窓周りの気密性を高める
- どんなに高性能な防音ガラスを採用しても、
窓枠や窓周りに隙間があると音は漏れてしまう。
気密性の高いサッシ(樹脂サッシや遮音サッシ)を選ぶ。 - 既存のサッシをそのまま流用する場合は、
窓枠やレールの隙間を専用シーリング材で埋めると遮音性が向上。 - 内窓(二重窓)を併用すると効果絶大。
既存窓の内側にもう一つ小窓を取り付けることで、
さらに20~25dBの遮音効果がプラスされる。
3. ガラス厚や空気層幅を適切に設定
- 防音複層ガラスでは、ガラス厚を外側:4mm+内側:6mmなど、異なる厚みを組み合わせると遮音性能が高まる。
- 空気層の幅(6mm~12mm)が広いほど音を吸収しやすいが、あまり広すぎると断熱性能は下がるのでバランスが重要。
- 吸音フィルム入りの場合は、
ガラス間にPVB膜を挟み込むことで質量を増し、
中高周波音を効率的に遮断。
防音ガラス交換・施工の手順と費用相場
防音ガラスは必ず専門業者に依頼し、ガラス選定から施工まで一貫した対応を行いましょう。以下は一般的な流れと費用目安です。
Step1:現地調査と騒音計測
- 騒音源(道路、線路、隣家)からの距離、音の種類、音量(dB)を騒音計で測定。
- 既存窓のサッシ種別(アルミ・樹脂・木製)、窓の向き(東西南北)、
周囲の建物形状を確認。 - 防音レベル(Rw値)をどれくらい確保したいかを相談し、
複層ガラス・吸音複層ガラス・トリプルガラスなど候補を絞る。
Step2:ガラス製作とサッシ改修(必要時)
- 防音複層ガラスのガラス厚・空気層幅・吸音フィルム等の仕様を決定し、
ガラス工場で製作。(約1~2週間) - 既存サッシが古く、気密性や断熱性が劣る場合は、遮音性に優れた樹脂サッシへの交換も検討。
- 窓周り(窓枠・レール)の隙間をシーリングやスポンジパッキンで
気密性を向上させる補修。
Step3:既存ガラスの撤去と新ガラスの取り付け
- 養生シートやカバーを設置し、
周囲の壁や床を傷つけないようにする。 - 既存ガラスを慎重に外し、サッシ枠のガラス溝を清掃。
気密テープやビート材が残らないよう掃除。 - 防音複層ガラスユニットを搬入し、
ガラス溝に入れて水平・垂直を確認しながら押し込む。 - 押さえゴムやビート材でガラスを固定し、
サッシ枠との気密性を高めるためシーリング材を充填。 - 施工後24時間ほどは触れずに硬化を待ち、
シーリング部分の仕上げや清掃を行う。
費用相場:
– 吸音複層ガラス(4mm+4mm+吸音PVBフィルム+乾燥空気層):約30,000~40,000円/㎡(施工費込)
– トリプルガラス(4mm+6mm+4mm+2層空気層):約40,000~55,000円/㎡
– 樹脂サッシ交換込みの場合:+約10,000~15,000円/㎡(サッシ本体+施工費)
防音ガラス導入時のよくあるトラブルと回避策
- 施工後も騒音が気になる:ガラスだけでなくサッシや周囲の壁に隙間がある場合、
音が漏れる。
→ サッシの気密性を向上させるため、
隙間を専門シーリング材で封鎖し、
サッシとガラス枠の取り合い部を再チェック。 - 内窓(二重窓)との併用が必要だった:外側窓だけではRw値が十分に確保できない場合、
内窓(内側にもう1枚窓を設置)を併用する必要がある。
→ 施工前に業者としっかり相談し、
二重窓導入の予算やメリット・デメリットを把握。 - 結露が発生する:トリプルガラス以外の複層ガラスでは、冬場の
暖かい室内と冷たい外気の温度差で結露が起きやすい。
→ 断熱性を重視する場合はLow-E膜付き複層ガラスを選択。 - ガラス重量でサッシが歪む:トリプルガラスや重量級の吸音複層ガラスは、
サッシ枠に負荷がかかり、
歪みや開閉不良を起こす可能性がある。
→ 施工前にサッシ枠を補強するか、
専用サッシ枠への交換を検討。
まとめ
防音ガラスは、騒音問題を効果的に改善し、快適な住環境を実現するための有力な選択肢です。空気伝搬音や衝撃音を大幅に軽減できる吸音複層ガラスやトリプルガラスを選ぶことで、外部音を大幅にカットしながら断熱やUVカット効果も期待できます。ただし、ガラス単体だけでなくサッシや窓周りの気密性も重要ですので、専門業者に騒音調査を依頼し、最適な製品と施工方法を選びましょう。




