断熱ガラスとは?仕組みとメリット
断熱ガラス(複層ガラス、ペアガラスとも呼ばれる)は、2枚以上のガラス板の間に空気層またはアルゴンガスを挟み込んだ構造を持ちます。一般的には以下のような種類があります。
- 複層ガラス(ペアガラス)
2枚の透明ガラスの間に乾燥空気を封入。断熱性能は単板ガラスの約2倍。 - Low-E複層ガラス
内側のガラスにLow-E(低放射)膜を蒸着し、暖房時の室内熱を反射して室内に留め、
冷暖房効率をさらに向上させる。 - アルゴンガス入り複層ガラス
ガラス間にアルゴンガスを充填することで、空気より熱伝導率を下げ、断熱性をアップ。 - トリプルガラス(3重ガラス)
3枚のガラス+2層の空気層で構成され、断熱性能は複層ガラスの約1.5~2倍。
断熱ガラスを導入することで、窓からの熱損失を大幅に削減し、冷暖房コストを抑えることができます。また、以下のようなメリットがあります。
- 結露軽減
室内側のガラス表面温度が高くなるため、冬場でも結露が発生しにくい。 - 防音効果
空気層やガラス枚数が増えることで、外部の騒音を遮断。 - UVカット
Low-E膜や特殊コーティングで、紫外線を70~90%カットし、家具や床の日焼けを防止。 - 耐風圧性能
複層構造によりガラス剛性が高まり、風による揺れや破損リスクを低減。
断熱ガラスの種類と性能比較
断熱ガラスはさまざまなバリエーションがあります。代表的な3種類を、性能と費用相場で比較します。
● 標準複層ガラス(空気層タイプ)
- 構造:透明ガラス(片面Low-Eなし)×2枚+乾燥空気層(6mm~12mm程度)
- 熱貫流率(U値):約2.8~3.0 W/m²K(単板ガラスは約5.8~6.0 W/m²K)
- 価格相場:12,000~18,000円/㎡(施工費込、既存枠利用時)
- メリット:価格が比較的安く、結露軽減効果あり。
戸建て住宅のリフォーム需要が高い。 - デメリット:Low-E膜なしのため、
断熱性はMidレベル。夏季の遮熱効果は限定的。
● Low-E複層ガラス(空気層タイプ)
- 構造:Low-E膜付き透明ガラス×1枚+通常透明ガラス×1枚+乾燥空気層
- 熱貫流率(U値):約2.0~2.4 W/m²K
- 価格相場:18,000~25,000円/㎡(施工費込、既存枠利用時)
- メリット:冬場の暖房効率向上と夏場の紫外線・赤外線の反射効果で快適性が高い。
- デメリット:通常複層ガラスより価格が高く、
夏の強い日射を遮断する断熱効果は別途遮熱コーティングが必要な場合あり。
● アルゴンガス入りLow-E複層ガラス
- 構造:Low-E膜付き透明ガラス×1枚+通常ガラス×1枚+アルゴンガス層(9mm以上推奨)
- 熱貫流率(U値):約1.8~2.1 W/m²K
- 価格相場:22,000~30,000円/㎡(施工費込)
- メリット:空気より熱伝導率が低いアルゴンガスを使うため、
断熱性能が最高レベルに近い。冷暖房コストの削減率が大きい。 - デメリット:最も価格が高い。施工時の取扱いや気密性確保が重要。
断熱ガラスに交換するメリットと導入費用対効果
断熱ガラスに交換すると、以下のような効果が期待できます。
冷暖房費用の削減
- 断熱ガラス導入前後で冷暖房費用が年間約10~20%削減されるケースが多い。
特に冬の暖房効果が顕著で、暖房費の浪費を防げる。 - 札幌や青森などの寒冷地では、年間光熱費の削減額が高くなる傾向。
快適性アップ(結露・冷気対策)
- ガラス表面の温度が上昇するため、冬場の結露発生率が低下し、
カビやダニの繁殖リスクを抑制。 - 隙間風が入りにくくなるため、室内の温度ムラが減り、
冷気が足元に溜まるような現象を軽減。
資産価値の向上
- 住宅を売却・賃貸に出す際、「断熱リフォーム済み」の物件は
市場価値が高く評価されやすい。 - ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や省エネ基準対応も容易になり、
補助金や税制優遇を受けられるケースがある。
断熱ガラス交換の施工手順と注意点
断熱ガラス交換はDIYでは難しく、必ず専門業者に依頼しましょう。以下は一般的な施工手順です。
Step1:現地調査と見積もり
- 既存サッシの種類(アルミ枠・樹脂枠・木製枠など)を確認し、再利用可能か検討。
- 窓サイズを正確に測定し、窓の開閉機構や<サッシ周囲の断熱材有無>をチェック。
- 導入候補の断熱ガラス(複層・Low-E・アルゴンガス入りなど)を選定し、
複数社から見積もりを取得。 - 地方自治体の補助金制度(住宅リフォーム支援・ZEH補助金など)の対象か確認。
Step2:既存窓ガラスの撤去
- 施工当日、作業エリアを養生(床や家具を保護)。
- ガラス押さえゴムやビート材を外し、
慎重に既存の単板ガラスまたは古い複層ガラスを取り外す。 - サッシのレールやガラス溝を掃除し、
下地に汚れやシーリング残留物がないよう清掃。 - 築年数が経過した建物では、サッシ枠自体に歪みや摩耗があるため、
必要に応じてサッシ枠を補修または交換。
Step3:断熱ガラスの取り付け
- 新しい断熱ガラス(メーカー指定の複層ユニットガラス)を慎重に搬入。
- ガラス溝にあらかじめ取り付けた耐候性ビート材(押さえゴム)をセット。
- 断熱ガラスユニットをサッシ溝に差し込み、水平・垂直を最終確認。
- 押さえ金具やフィンガーリップを元に戻し、ガラスをしっかり固定。
- ガラス周囲にシリコンシーリングを充填して気密性を確保し、
水密性や断熱性能を最大化。 - 施工後24~48時間はガラスを強く押さえないよう注意し、
シーリングの硬化を待つ。
費用を抑えるコツと補助金制度
- 既存サッシ枠を活かす:サッシそのものを交換せずに、ガラスユニットだけを
交換する「インナーサッシ交換方式」を選ぶと、工事費を大幅に削減できる。 - 複数窓を一括交換:同時に複数窓を断熱ガラスに交換すると、
1窓あたりの施工費が割安になる業者が多い。 - 自治体の補助金を活用:省エネリフォーム補助金(例:グリーン住宅ポイント、ZEH補助金など)が申請できる場合、
ガラス交換費用の一部が助成される。 - DIY併用で内装費を削減:断熱ガラス交換後に内装クロスをDIYで張り替えるなど、
工事範囲を明確に分担するとコストダウンにつながる。
まとめ
断熱ガラス(複層ガラス/Low-E/アルゴンガス入り)は、冷暖房コストの大幅削減、結露軽減、防音性向上、UVカット効果など多くのメリットがあります。
施工はDIYでは難しいため、必ず信頼できる専門業者に依頼し、事前に複数見積もりを比較し、自治体の補助金を活用することで、コストと性能のバランスを最適化しましょう。冬寒い・夏暑い悩みから解放され、快適な住空間を手に入れましょう。




