【クーリングオフ事例】トイレつまりの高額請求

はじめに

本記事の目的と構成

本記事の目的は、水漏れ・トイレ詰まりで悪質な高額請求トラブルの解決事例を詳しく解説することで同様の被害に遭わない準備、及び現在被害に遭っている方の解決の手助けとなる情報を提供することです。業者に依頼する前に理解しておくことで自分に最適な選択をするためのガイドとなることを目指しています。

トイレつまりの高額請求トラブル紛争案件

今回は令和3年4月の「トイレの詰まりをきっかけとした高額な修理契約に係る紛争」の報告書をもとにわかりやすく解説を行います。最終的には被害者の救済が行われましたが、解決までに半年以上の時間を要しています。

 

クーリング・オフの適用可否をめぐる紛争案件の概要

被害者Aと被害者Bは、自宅のトイレの詰まり修理を依頼するためにインターネットで修理業者を検索しました。ウェブサイトには「950円~」(被害者A)、「980円~」(被害者B)と安価な代金が表示されており、それに魅かれて電話で依頼しました。業者は自宅に訪問し、すぐに修理作業が始まりましたが、詰まりが解消されずに高額な代金を要求されました。被害者らは支払い後に代金の高さに疑問を持ち、消費生活センターに相談しましたが、業者はクーリング・オフを認めませんでした。

項目被害者A被害者B
提案された修理方法・代金①高圧ローポンプ 1万5千円
②便器脱着 5万円
③配管洗浄 25万円
①便器脱着 2万円
②配管洗浄 27万5千円
支払(契約)金額25万円25万円
支払方法現金クレジットカード

申立人(消費者)2名

被害者A:20 歳代男性

被害者B:20 歳代男性

相手方(事業者)1社 水回り修理事業者(代表者A)

被害者Aの主張

トイレが詰まっていることに気付き、修理業者を探すためにインターネットで検索して、一番上に表示された修理サービスDのウェブサイト を見た。まず「950 円」という金額が記載してあり、その後にクレームが少ないこと や 2020 年の実績件数などとフリーダイヤルが書かれていた。

修理内容ごとの代金の 記載や最大どのくらいかかるかの記載はなかった。検索の二番目のウェブサイトは 千円を少し超える金額だったので、そんなに変わらないならどこでも大丈夫かなと、 代金は多く見積もっても1万円以内でおさまるかなと思った。 表示している金額が1番安かった修理サービスDのウェブサイトに記載されてい たフリーダイヤルに電話をかけて、トイレの詰まり修理について依頼したところ、 担当から折り返し連絡するからと、住所や電話番号、名前を聞かれた。修理方法や 代金についての説明はなかった。 2~3分たってから電話があり、「先ほど連絡をいただいた者です。30 分から1 時間ぐらいで行けると思います。」と言われた。その時も修理方法や代金について の説明はなかったし、自分からも尋ねなかった。 

「先ほど連絡いただいた者です。」と、男性の作業員1人(担当者B)が訪ねて きた。作業着を着ていたのでトイレの詰まり修理の人だと思い玄関を開けた。安価な修理業者を選択し、連絡を取り、訪問してもらいましたが、修理内容や代金についての説明はなく、高額な料金を請求されました。修理作業の途中で料金が高額になることを告げられましたが、直さなければならないという思いから了承しました。作業後、母親に相談したところ、料金が高すぎるという指摘を受け、消費生活センターに相談しました。修理から7日後にクーリング・オフ通知を出しました。

※1 編集部での脚色が無いように一部抜粋してそのまま書き出しています。


被害者Bの主張

自宅に帰宅した際、トイレから異臭がし、詰まっている状態だったが、原因は不明でした。インターネットで「トイレ詰まり 水道業者」と検索して、検索画面の一番上に 出てきた修理サービスEのウェブサイトを選び、電話した。金額は「980 円~」と書 いてあったが、ほかに金額が書いてあったか覚えていない。

検索上位の3社のウェ ブサイトを見てみたが、980 円が一番安かった。 相場感覚が一切ないので、トイレットペーパーの詰まりだとか、その程度であれば 980 円で修理ができ、高くても1万円を上回ることはないだろうと思っていた。 ウェブサイトに記載されていたフリーダイヤルに電話をかけて、家の状況、トイ レの状況を説明したら、「すぐに担当の者が駆けつけますので、そのままでお待ち ください。」と言われた。その時に代金の確認はしなかった。

事業者から折り返しの電話があり、「あと 10 分、15 分で参りますのでお待ちくだ さい。」と言われた。この時も、代金や修理の内容については一切話していない。待っていたら男性の作業員が2人来て、うち1人(担当者C)は主に説明を行い、 もう1人は作業を行った。作業員は会社名を乗ったかもしれないが、聞き流してい たので覚えていない。修理内容や代金についての説明はなく、作業が行われました。修理後、支払いが高額であることに気付き、調べた結果、被害を感じ、クーリング・オフを行いました。また、契約書には詳細な作業内容や料金が記載されていましたが、作業中は作業内容の説明はなく、高額な支払いに戸惑いました。

※2 編集部での脚色が無いように一部抜粋してそのまま書き出しています。

業者の主張

  • 修理業者は相手方代表者の委任を受け、それぞれの自宅で作業を行いました。相手方担当者は個人事業主であり、相手方との契約内容についての情報提供が不足していました。
  • 修理サービスD・Eのウェブサイトには基本料金ではなく出張料や見積料が記載されており、代金の具体的な説明は現場で行われると説明されました。
  • 修理作業中には具体的なトラブルを避けるため、代金の詳細は伝えられず、作業の開始前に作業内容と代金について了承を得ていたと主張されました。
  • 作業内容に関して、薬剤や高圧ローポンプの説明があり、作業は通管作業と洗管作業が行われ、薬剤も使用されたと説明されました。

まとめ今回の被害者はどちらも緊急トラブルの解決の為に「インターネットで検索し、上位に来る一番安い業者に依頼」結果として被害者の承諾無しに、あれもこれもと不要な作業も積み重なり高額請求で騙されたと主張。一方現場で作業を行なった業者はあくまでも斡旋されて手配されており、被害者が何をみて依頼したのかは知らないので必要な作業を行なったので悪意は無いので認めないという主張がぶつかりあった事例となります。

クーリング・オフを認める合意書の内容

被害者と業者の間で令和3年2月○日に締結されたトイレ詰まり修理に関する工事 請負契約(以下「本件契約」という。)に係る取引は、訪問販売(特定商取引に関する法 律第2条第1項第1号)に該当することから、以下のとおり合意する。 

【被害者A】 

1 業者は、本件契約が、令和3年2月○日付けの被害者による申出により、特定 商取引に関する法律第9条に基づき解除(クーリング・オフ)されたことを認め、 被害者が業者に対し、本件契約の代金として支払った 250,000 円を被害者に対し返 還する義務があることを認める。 

2 業者は、上記1の返還すべき金員 250,000 円を、被害者の指定する金融機関口座 に、令和3年○月○日までに、全額を一括で振り込む方法により支払う。なお、振 込手数料は業者の負担とする。

 3 被害者と業者の間には、本件契約に関して、本あっせん条項以外に、何らの債権債務のないことを相互に確認する。 

【被害者B】

 1 被害者と業者は、本件契約が、令和3年2月○日付けの被害者による申出によ り、特定商取引に関する法律第9条に基づき解除(クーリング・オフ)されたこと を確認する。

 2 被害者と業者の間には、本件契約に関して、本あっせん条項以外に、何らの債 権債務のないことを相互に確認する。

まとめ最終的には被害者両名のクーリングオフが認められて、業者は被害者に支払済みの代金を返金することになりました。

本件契約のあっせん案に係る法的問題点

今回の事案の問題点がなんだったのか?をまとめると、被害者は広告を見たり、電話をかけたり、相手方からの電話を受けたりする過程で、トイレの詰まり修理の作業内容や料金について明確な情報を得ていなかった。したがって、被害者が実際にサービス提供業者に訪問される前の段階では、最終的な作業内容や料金について契約をする意思を持っていたとは言えない。

広告には「950円から」と表示されていたが、実際の契約金額は25万円であり、顕著な開きがある。このため、被害者が高額な契約を意図的に行おうとしたとは言えず、特定商取引法の適用除外は認められない。また、サービス提供業者が作業前に作業内容や料金を申立人に説明したと主張しても、これは特定商取引法の適用除外の判断材料とはならない。

被害者らの場合、特定商取引法に基づく訪問販売に該当し、そのためクーリング・オフ制度が適用されます。被害者両名はクーリング・オフ通知を書面で業者に通知し、クーリング・オフが成立しています。被害者Aは25万円を支払ったため、業者は速やかに返金する義務があります。一方、被害者Bはクレジットカードで支払ったが取り消されたため、返金を求める金額はありません。また、原状回復に関しては申立人らが請求していないため、業者はそれに対する措置をとる必要はありません。クーリング・オフに伴う違約金や損害賠償は請求できず、既に役務が提供された場合でも対価を請求できません。

本件契約のその他の法的問題点

景品表示法に基づく広告の表示の問題

被害者らは、ウェブサイト上で見た広告には低料金の表示がありましたが、実際には修理作業の代金はそれよりも高額であり、広告と実際の契約内容に齟齬があったことが明らかになりました。このため、広告が有利な条件を誤認させる可能性があり、景品表示法違反の可能性があります。

消費者契約法上の問題

被害者が高額な洗管作業を依頼した際、実際に必要な作業内容や料金について適切な説明がなされていなかった可能性があります。さらに、契約書に記載された項目と担当者からの説明との齟齬もあり、消費者契約法の適用に関しても複雑な問題が浮上しています。特に、広告によって契約が成立し、その広告を媒介した広告運営事業者との関係も検討される必要があります。

民法上の問題

暴利行為による無効が懸念されます。暴利行為は公序良俗に違反する行為であり、他者の窮状や無知を利用して過大な利益を得ることを指します。本件では、トイレの修理という重要な部分に関連して契約が締結されたが、実際の契約金額は広告表示の約250倍にもなります。これは暴利行為の典型であり、申立人らが早期に消費生活センターに相談し、クーリング・オフ期間内に権利を行使できたことが重要です。ただし、クーリング・オフ期間を過ぎた場合は、暴利行為の適用がさらに重要になります。

ケーススタディ

さて、クーリング・オフは明らかに法的な違法である契約に対して業者との話し合いが平行線になった場合の被害者救済の最終手段であり今回の件は被害者側の主張が認められた事により救済が行われましたが、全てがこの様にうまく解決する訳ではありません。

例えば、クーリング・オフを申請した業者が倒産などで姿を消していた場合どうなるでしょう?

また作業を行なった業者側の主張に関してもよくよく読み解くと、集客会社からの斡旋と、案件(送客)に対する手数料の高騰など現在の出張サービスにおける業界構造の悪い部分も高額請求を行う要因の一つになっていると言えますが、実際にトイレやキッチンの排水のつまりは配管内部の根本的なつまりが原因の場合は業者の主張の様に大掛かりな工事が必要になる事もあります。

最初から高額請求するつもりで安さを売りにした広告で利用者を集めていたのかどうかまでは今回の判例だけでは断定することは出来ないのも事実です。利用者はトラブルになっても慌てずに正しい情報を身につけた上で業者に依頼する。また業者は、適切で透明性のある正しい情報を発信することが重要です。

よって今回の判例からのケーススタディは以下でまとめておきます。

利用者側

・信頼のできる情報を見分ける知識を身につける

業者側

・利用者に正しい情報を提供する

さて、今回はトイレつまりの高額請求トラブルにおけるクーリング・オフに関する情報をまとめました。お困りごとを助けてくれる出張業者は時にはヒーローの様な存在です。皆様が正しい知識を身につけユーザー体験のFeedbackを行なってくれることで他に困っている方のみならず、修理事業者にとっても非常に大事な情報であり業界の健全化と活性化につながります。

是非ご利用になられた業者様へのレビュー投稿もお願いします。

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